ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 3rd Live! School Idol Festival ~夢の始まり~

このゴールデンウィークラブライブ!シリーズはつま恋Aqours野外ライブが中止となり、Liella!のデビューイベントが無観客配信となってしまいました。
そんなギリギリの状況の中、最速先行の当選者のみに限定された形にはなりましたが、5月8日、9日の虹ヶ咲3rd Liveは有観客で開催され、私は幸運にも両日現地参加することができました。


この2日間は新幹線→在来線で直接現地→都内のホテルで一泊→現地2日目→新宿からバスで帰宅というコース。久しぶりの関東遠征ということで、当初はついでにあちこち聖地巡礼しようと考えていたのですが、結局は感染リスクを極力下げるためにどこにも行かず、外食も一切せずに、ほぼコンビニ飯とカロリーメイトだけで2日間を過ごす、というぐらい慎重に行動していました。

それでも私は現地でこのライブを見たい!という想いを強く持っていました。それはこの3rdが、アニメ1期を背負ったライブであったことが大きく関係します。ライブがアニメーション内の楽曲だけでなく、ストーリーともシンクロして進むというのは、ラブライブ!のライブの中でも特別なのです。端的に言えば、Aqpursの1st(LV)、3rd(現地+LV)で得たような感動、興奮が得られることを期待していた、ということです。

 

結論から言って、今回のライブはその期待に十分応えてくれたものになりました。
まず全体的な構成として、アニメ準拠のライブ(前半)とそれ以外(後半)を明確に分けていたのがとても良かったです。私はAqours 5thのセトリに混乱していた人なので、今回のように分かりやすい構成は、気持ちを入れやすく、素直に両方を楽しめました。
また、ソロならではの「衣装替えの時間がほぼ必要ない」という特性を活かし、曲間に挟むストーリー映像を必要最小限にして(でも必要な部分はしっかり見せて)、個々の物語を背景映像の中にダイジェストとして組み込んでいるのもバランスがいいなと思いました。

 

そして高咲侑役である矢野妃菜喜さんのピアノ。物語準拠という観点から言うと、ここで侑はピアノを弾いていないし、だからこそライブでこれが披露されるとは予想していませんでした。また、多くの人がAqours 1stを思い出すであろう演出は、二番煎じの誹りを受けても仕方がない面もあります。それでもこのピアノは、ダイジェストだった映像を補完し、侑と他のニジガクメンバーの関係をリアルに示すための演出として、成立していました。また結果的に、これがAqours 1st 2日目とはまた違った形で、ライブに奇跡を起こしました。
2日目で、矢野さんがピアノを弾き始められなかったときに聞こえた大西さんの「がんばれ」という小さな声。Aqoursの時はその声を多くの観客が発し、それを受けて、逢田さんがもう一度ピアノに向かいました。しかし今回はコロナ禍で、誰もその言葉を叫ぶことができません。逆に言えば、もし状況が違えば、大西さんの声は多くの観客の「がんばれ!」にかき消されていたでしょう。でもそうでなかったから、みんなが心の中で祈ったことが、大西さんの、歩夢の言葉として侑に、矢野さんに届きました。
侑は「あなた」の1人であり、「あなた」は私であり、みんなでもあります。今回のライブに応援出演という形で出られた矢野さんは、声を出せない私たちのアバターです。でもこの瞬間、みんなの心の声は大西さんの、歩夢の声となりました。その言葉が届いた先は、矢野さんであると同時に自分自身でもあり、この状況に閉塞感や不安感を抱えているみんなでもあったと言えます。他の人を助ける力も、受け取る力も、自分自身が立ち上がる力も、自分の中にちゃんとある。何ともラブライブ!らしい場面だったと思います。

 

次に、キャストさんのパフォーマンスについて書いていきます。
パフォーマンスについては、皆さん1st、2ndからの成長著しいものがありました。特に良かったものをいくつか挙げると、まずは何と言っても相良茉優さんの「無敵級*ビリーバー」。2ndライブを見たうえで、今回見事にかすみんを表現しきった相良さんの姿、その後の素の相良さんの姿は強く心に残りました。「Poppin' Up!」は1日目も良かったのですが、2日目はよりかすみんとして楽しんでいるように見えましたね。それと村上奈津実さん。村上さんは「サイコーハート」で見せてくれたスタミナ力の更なる向上ももちろん素晴らしかったのですが、個人的には「虹色Passions!」のソロパートでの笑顔が最高でした。村上さんってすぐ泣くんですけど(笑)、その泣き顔で見せる笑顔が本当にステキだなといつも思います。
表現力では、これまでとちょっと違う雰囲気の楽曲になった指出毬亜さんと鬼頭明里さんにも驚かされました。これまでの曲がダメという訳ではなく、ご本人の表現力の高さにより合った楽曲だったような気がします。あと2日目で、落とした麦わら帽子を最後に拾って微笑む指出さんが可愛かったですね。
それと久保田未夢さんも、朝香果林をより近しい存在として感じられたのか、これまで感じていた本人との乖離からくる違和感がなかったように思いました。
もちろん言うまでもなく、ここで挙げなかった方々も皆さん素晴らしかったです。

 

ただし、私は虹ヶ咲のパフォーマンスには、決してレベルとしては高くないと思っています。ソロでアーティストデビューされている方もいる中で失礼な言葉ですが、それは基準点をどこに置くのかということで、ご容赦いただきたいです。声優という枠を取り除き、広く芸能活動されているアーティスト全体を俯瞰すると、スクールアイドルである高校生の年代として見ても、キャストの中心である20代半ばとして見ても、ダンスも歌ももっとできる人が沢山います。その中で、声優だから、スクールアイドルだから(スキルはそこまで求めない)というのが免罪符になっていて、そのうえで、キャストの皆さんのメンバーを理解しようとする気持ちや努力、成長の過程を応援している訳です。

Aqoursはその点、声優としてのスキルを二の次にして、元々かなりダンスができる人、歌唱力が高い人、舞台で豊かな表現ができる人を集め、合宿や日々のレッスンの中で相互に刺激を受けて成長しつつ、グループとしてのパフォーマンス力を高めていったので、出発点のレベルがまず全然違っていました。そしてスキル面で言えばまだまだ差があるというか、「DREAMY COLOR」、あれはちょっと追いつけないレベルに達してしまった感があります。
ゲームのボイス+歌唱を主軸に集められ、アニメ放送中も個々の活動と虹ヶ咲としての活動が並行し、さらにはコロナの影響もあり、全員集まることもままならない。それを状況として捉え、その中でのキャストの頑張りを見れば、それはもう本当に素晴らしいし、伝わってくるものが沢山あります。
しかし、ライブの中で大西さんは言いました。「東京ドームに行きたい」「紅白にだって出たい」と。
それはそれで、小犬が吠えているようで可愛いなぁと思いながら見ていたのですが、果たしてそれは実現するでしょうか?

 

μ'sは『ラブライブ!』という作品そのものの盛り上がりの一翼を担い、ファイナルに向けた大きな打ち上げ花火として、それを成し遂げました。Aqoursは『ラブライブ!』を永続するプロジェクトにする、という重責を背負い、それに実力をもって応えた結果、叶えました。余談ですが、もし昨年ドームツアーが成功していれば、Aqoursは企画枠でなく、出場歌手枠として2回目の紅白出場を間違いなく果たしていたと思っています。
そしてLiella!。彼女たちはこれからのグループですが、リリースイベントで見せたパフォーマンスのレベルの高さには本当に驚きました。おそらくそのレッスン量は、他の仕事を多く抱える虹ヶ咲の比ではないと思います。また、何と言ってもアニメ放送がNHK Eテレからという強みがあります。おそらくNHKはLiella!の活動に密着し、ドキュメンタリーを放送して盛り上げ、他番組にも出演させることで認知を広げようとするでしょう。東京ドームはまだ見えなくても、紅白への道はLiella!の方が近いように思います。

 

もちろん、紅白が歌手としての実力だけで選出される訳ではありませんし、NHKが推しているかどうかもその一要素でしかありません。
ただ、今の虹ヶ咲の延長線上に東京ドームはあるかも知れないけど、紅白はまだ見えないな、というのが私の正直な気持ちです(飛び道具として、「ラブライブ! School Idol All Stars」としての出演はあるかも知れません)。
虹ヶ咲がリアルな歌手、パフォーマーとして、普段アニメや声優を追っていない人を含めてもっと認知度を高めるためには、ソロだからを言い訳に使わず、もっとグループとしての活動ができる時間、レッスンをする時間を用意し、グループとしてのスキルを高める必要があるでしょう。ただ、それって虹ヶ咲なのかな、という気もしますね。

「だったら東京ドームなんて行かなくていい!」
「紅白だって、出なくていい!」

1期の高咲侑であれば、きっとこう言うのではないでしょうか。

これも余談ですが、まさに今、スクスタのメインストーリーで、ランジュとミアが問いかけているテーマもここにあります。

 

だいぶ話が逸れてしまいました。以下、無理矢理なまとめ。
虹ヶ咲のライブの魅力は、キャストとキャラクターが一体になるというより、それぞれが担当メンバーと向き合い、相手を理解して、その想いを必死にパフォーマンスで伝えている、その「キャスト」を応援できること。そのときキャラクターはキャストの中にいるのではなく、そばで見ている。だから相良さんは26歳だし、指出さんは卒業を祝ってもらえるし、前田さんはラーメンを奢る。かすみん芸をしているときの相良さんを除いて、誰もお互いをキャラクターの名前で呼ばない。それが虹ヶ咲らしさ。
今回はそのキャストの努力が力強いメッセージとして届いた、そんなライブだったと思います。

 

おまけ

ちなみに座席は1日目がアリーナS12、2日目がアリーナL6。S12は花道の2つ右側、L6はセンターのすぐ後ろ、左端から2つ目のブロックでした。立ち上がることが禁止されていたことで、どちらも舞台がよく見え、かつ、違った角度から2回の公演を楽しめたのはとても良かったです。そして2日目、目の前を鬼頭さんのトロッコが横切ったときの衝撃! そういった面でも、今回のライブは十分楽しめました。