映画大好きポンポさん

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モノを作る孤独、狂気、残酷さと、それでも止められない熱さをハイテンポで描きながら、ただ勢いで突っ走るのではなく、物語内で作られる作品のようにいわゆる映画的展開、時間配分を計算し尽くして作っているような感じがして、そのバランスが面白いなと思いました。
本質的なところでは、『メイドインアビス』が描いている"止められない探求心"に近しいものを感じます。

何かを創作、表現することを目指している人には刺さるでしょうし、そういうものが見つからなくて焦っている人にも、ヒントを与えてくれると思います。
ただ私のように、かつて漠然と創作の道に憧れながら結局、それを選ばなかった人には、普段封をしている部分を突かれているような気がして、ちょっと痛いものがありました。

私は今の仕事のおかげでそれなりに安定した収入が得られ、妻と子供を持ち、家もあります。創作の欲求に対しては、二次創作イラストという趣味があります。
でも、お前の人生、本当にそれでいいの?と囁かれたとき、胸を張ってYesと答えられるのかといえば……。
そういう、この年になると何甘いこと言ってんの!現実を見ようよ、で片付けてしまうようなことを改めて問われている気がしました。

また一方で、これに何も感じなくなったらいよいよダメだ、という気持ちもあるので、そういった意味では自分を確認することができたとも言えます。

あとこれは余談ですが、作中にセンシティブな表現を全く用いていないのがとても良かったです。例えばB級映画のお約束として、巨大ダコの足に締め付けられる登場人物の姿が描かれるのですが、確かに胸は強調されているものの、本来そこにあるはずのエロティシズムをわざと廃しているように思えました。また、ヒロインもとても魅力的に描かれていながら、そういったシーンは出てきません。
個人的には、ヲタク受けを狙った作品がテーマに関係なく絵で胸や足を強調したり、必要以上に上気した表情を描くのは好ましくないと思っているので、こういう作品がもっと増えたらいいなと思います。