フラ・フラダンス
何かの映画の上映前、予告編で初めてこの作品を知った時に私がまず思ったのは、「いやいや、もう『フラガール』があるやん!?」です。
李相日監督の「フラガール」は、炭鉱の町いわき市で常磐ハワイアンセンター(スパリゾートハワイアンズ)を設立するまでを描いた作品です。ドキュメンタリー要素をうまく織り込みながらも青春感があり、特に蒼井優さんが踊るクライマックスシーンは本当に圧巻で、これを超えるものをアニメで作るのはちょっと無理だろうと思ったのです。
特に目玉になるであろうフラダンスのシーンにおいて、生身の魅力に勝つのは難しい。昨今アイドルアニメのライブシーンが注目されているのは、キャラクターしての可愛さや、現実には実現できないような演出を織り込んでいるからこそで、本作のようにリアルを求められる作品のダンスシーンで、どこまでその魅力が表現できるのかについては、懐疑的な考えを持っていました。
結果的に、「フラガール」を超えたか、フラダンスシーンが実写以上の魅力を持っていたかについては、そう言い切れるようなものではなかったと思います。
ただ、とても良かった。
新人フラガールたちの日常の積み重ねを丁寧に描くことで、登場人物に寄り添いながら成長を見守っているような感覚があり、クライマックスに向けた感情の流れに乗るというよりも、ふとしたシーンに何度も心を打たれ、涙する。そして観終わった後に、自分もみんなから元気を分けてもらっていたことに気づき、頑張ろうと思えてくるような、そんな作品。
また、震災に対するアプローチも押しつけがましさや無理矢理な感動秘話化がなく、ただそこにあったものとして、忘れずに伝えるべきことを伝えていたように思います。
あとこれは余談ですが、ご当地+お仕事アニメに対するアニメならではアプローチが、偶然にも同時期にテレビ放送されていた「白い砂のアクアトープ」とよく似ていた点も興味深かったですね。CoCoネェさん = キジムナー、ですから。
アニメが得意とする誇張表現を抑えつつも、実写で表現するのが難しいものを描くことで、アニメ作品として作る意味がそこにあるように思いました。