アイの歌声を聴かせて

唸るほどカンペキ。

物語としての起承転結、ストーリー内の伏線の張り方と回収、ミュージカルシーンの必然性、冒頭シーンから自然に伝わる世界観……。
どれもが無理なく描かれていて、ヒミツが明らかになるシーンではボロ泣きし、最後の最後まで余計な引っ掛かりなく楽しめ、ハッピーになって劇場を出られました。
さらに、女性AIを描きながらハダカを一切描かず、それでいて女の子にドキドキする男の子の心情もユーモアを交え、温かく表現しているところが素敵だなぁと思いました。
本当に、年齢、性別、趣味嗜好問わず、誰にでも勧められる作品です。

ただ、ただ、その反面、作り手の熱さとか、勢いとか、俺はこれを描きたいんだよ!みたいな、そういうロジック以外のところで心をグッと掴まれるような感覚が得られなかった、という面もありました。

ある意味、すごく高度なAIが、多くの人間を楽しませるエンタメ劇場作品を作ってみました、みたいな、そんな感覚。
あえて言えば、そこがほんの少しだけ物足りなかったのですが、一方で、作品そのものの主題とそこも不思議とマッチしているようで、それを含めて面白いなと思いました。