音楽朗読劇「ヘブンズ・レコード~青空篇~」2019

ラブライブ!サンシャイン!!」で国木田花丸役を演じられている、高槻かなこさんが出演されている音楽朗読劇。初日の感想ツイートを見て気になり、翌日たまたま早く退社できたので、当日券で観てきました。

阪神・淡路大震災から5年後、ワゴン車で中古レコード店「ヘブンズ・レコード」を営む店長とバイト店員のところに、様々なお客さんが訪れ、心に抱えた傷を語り、そこに音楽が重なるオムニバス作品。
1話目は親子の話。この話が自分には一番響きました。やはり妻がいて、子供がいて、働いているという状況が自分に重なるからでしょうか。自分なら……と考えてしまいました。
2話目は夫婦の話。震災そのものというより、その後の暮らしにおいて起きた出来事が語られます。震災そのものは天災だけど、その後の暮らしには「たられば」がある訳で、それがなおさら傷になるのかも知れない、と思いました。
3話目はこれから結婚する2人の話。ここに高槻さんがユウミ役として出演されていました。ユウミの初台詞はこれまでの他の役者さんの語りとは全く違っていて、ここまで涙、涙だった客席にふと笑いが起きてしまうぐらいの意外性がありました。それが、物語が進むにつれ、彼女が抱えている傷が明らかになり、感情が爆発し……やっぱり泣いてしまいました。
そして最後に店長の話。彼が何を思い、なぜこの仕事をしているのかが語られていく……。エンディングの映像は、「それ」をリアルに新聞やテレビで見ていた自分にとって改めて、あの時を思い出させるものでした。
 
こういった作品で懸念してしまう説教臭さみたいなものは全くありません。素直に事実が語られるだけ。だからこそ、受け手である観客は、何かを考え、それを心に残したり、誰かに吐き出したくなる。そんな作品です。ただ、なかなかお金を払ってしんどい作品を観たいと思う人はいないでしょうから、そのきっかけが必要な訳で、そういった意味で高槻かなこさんを起用されたのはとてもよかったと思います。
 
あと、朗読劇、というスタイルの劇を観たのはおそらく初めてなのですが、元々ミュージカルが好きな私にとって、動きがなくても感情がここまで伝わるんだ、というのは素直な驚きでした。ただし、ところどころ関西弁のイントネーションが気になったのも事実。余計な引っかかりがあるのはとてももったいないので、そこはもうひと頑張りしてほしかったところです。
 
ちなみに本作を手掛けられた岡本貴也さんは、6月に伊波杏樹さんが出演された「朗読劇 私の頭の中の消しゴム」の脚本・演出も担当されていた方ですね。意外とご本人が「ラブライブ!サンシャイン!!」ファンだったりして。