天気の子

新海誠さんの映画」ですね、これは。
君の名は。」を踏まえ、てっきり音楽と演出の融合を進化させる方向に行くのかと思いきや、そっちは釣りに留めて、新海さんのやりたいことをやった感があります。

この展開を川村元気プロデューサーが止めなかったということが興味深いですが、確かにこれはターゲット層には刺さるのかも。
昔からの映画を見慣れたオトナのことなんて考えず、今の若い人に向けてエンターテイメント作品を作りました!! 犯罪助長? コドモの我がまま? 知るか! 自分の好きなモノをブッコンで何が悪い?という潔さが感じられました。

残念なのが、私にはもう、この作品に心を強く揺さぶられるような感性がない、と思い知らされたことです。「ほしのこえ」に感動したはずの私は、年を重ね、何かを得たのかもしれませんが、何か、大切なものを失いもしたのだと、突きつけられた気がしました。
帆高の周りにいる大人たちは、「帆高から見た」大人たちであり、私には全くリアリティがなくて感情移入できません。そして、帆高自身の行動にも共感できず、陽菜と凪の暮らしについても「ありえない」と受け付けることを拒絶してしまう。
背景をリアルに描くことで、たとえキャラクターやその行動が記号化されていても、内面に共感することができるというのは「ラブライブ!サンシャイン!!」で体感しているのですが、セリフに生っぽさがあるせいか、「天気の子」については不気味の谷のごとく拒否反応を示してしまいました。

ただ、雨が降り続く世界で晴れをもたらす少女がああなってこうなって……という、大局的に見たストーリー展開そのものは好きです。
誰にも感情移入できない作品でありながら、それでも最後まで飽きずに観られたというのは、そのストーリーと画力があってこそだと思います。