Aqours 5th LoveLive! Day2のLV会場で虹を作った話

こんなすごいことを現地でしかやらないなんて、もったいないよ!

Day2のLV会場で、開演前、私は1列目から後ろに向かって歩きながら、「ここでも虹を作りませんか?」と声掛けをしていました。1人で。
自分にまだこんなことをする無謀さが残っているなんて、自分が一番驚いています。
妻と子供がいて、普通に会社で働いている、怪獣ですらない普通人が何でそんなことをしでかすことになったのか、せっかくなので、今回はそのことを書いておこうと思います。

 

とにかく、Day1の虹は衝撃でした。
私は企画自体はライブの前からTwitterリツイートで知っていて、曲中ではなく、Aqoursコールのときに色を変えるというのは面白い試みだなと思っていました。また、公開されていたWebページで、自分の座席番号ならどの色になるかを確認したりもしていました。
しかし、成功するとは思っていませんでした。

まず環境が違う。海外で同様の企画が成功したのは、わざわざ日本の声優を応援するぐらいの高い熱量を持ったファンが、比較的小さいキャパの会場に集まるから。それに比べ、日本はライトなファンも多く、3万人を超える人々に周知するのは難しいだろうし、第一SNS上ではこういった企画を嫌う声がとても大きい。だから無理だ、と思い込んでいたのです。
そしてDay1のAqoursコール。私は自分にできる最大限のこととして、座席位置に合わせた色にブレードを変え、対面である1塁側の様子を見ていました。

 

「あぁ、頑張った人がいるんだな」

それが最初に思ったことです。ちょうど反対側のスタンドの下の方に、意識して見ればわかるほどの、何となく3年生の色が層になった部分が微かにある。その部分にだけそれが見えたのは、きっと開演前に直接声を掛けた人がいたからだと思います。今まで成功してこなかったブレード企画に、協力しようと思った人がこれだけいるんだ、ということに対し、少し嬉しい気持ちになりました。
しかし全体としてはまだ、みんなが思い思いの色を点けている状態です。企画としてはうまくいかなかったけど、一部の人とは気持ちを共有できた。そんなもんだよなぁと思いながら、私はAqoursコールを受けてAqoursが出てくるのを待っていました。

 

それから何分ぐらい経った頃でしょうか。何となく、ゆっくりと虹の範囲が広がってきているように感じたのは。「あれ? 何か全体的に広がっている?」と感じたその後がすごかった! 加速度的に光の色が変化して見る見るうちにドーム全体に広がり、あっという間に虹が完成! それはまるで、むっちゃカッコいいアニメの演出を見ているかのような数秒でした。そして、それが目の前で、自分を含めたAqoursファンの想いによって現実世界で作られたということ。その事実はこれまでのどのライブや舞台から受けたものとも種類の違う、大きな衝撃でした。

 

ちなみにこのときの光景に近いものに何があったかな、と考えて私が思い出したのは、「銀河鉄道999」で、999号が発車するときに機関室の奥から手前に色とりどりの光が迫ってくるシーン……うむ、全く伝わる気がしない。

 

そしてこの後、ユニット曲が始まっても虹は消えません。この企画は元々、Aqoursコールの間に虹を作ってAqoursを迎えよう、というもので、アンコール曲が始まってからのことは何も決めていなかったはずです。しかしこの時は、この光景の一部を自分が作っているというドキドキと、これを消すのはあまりにも勿体ないという気持ちで、色を変えようとは全く思いませんでした。
結局最後の「Next SPARKLING!!」まで虹は続き、今までとは全く違う妙な高揚感の中、Day1が終わりました。

 

で、Day2です。Day1の虹で私が一番嬉しかったのは、「自分がその一部になれた」ということでした。だから私は、その日の夜か翌朝か、とにかくあれをまたやりたい!と思い、LV会場でも虹を作りたくなりました。
しかし虹は1人の気持ちだけでは作れません。当たり前です。
そこでまず、同じようなことを考えている人が他にもいないかをTwitterで検索してみることにしました。同じ想いの人がいて、その中で積極的に動いてくれる人がいたら広まるかもしれないな、という期待を込めて。しかし残念ながら、そういったツイートはヒットはしませんでした。
ただ、それだけでは諦めきれない気持ちがあった私は、自分のできる範囲のことはやってみようと、LV会場の座席表を基に色分けしてみた図を作り、自ら呟いてみることにしました。それに対し、何人かからは「いいね」をもらい、リツイートもしてもらえました。
けれども元々Twitterで積極的に多くの人とつながりを持つ気がなかった私のフォロワー数で、これが広まることはあり得ません。それは自分でも分かっていました。でも、これが自分にできる範囲の精一杯なのです。ここまでやって、ダメだったらしょうがない。そう自分を納得させる限界はここまで。それで十分。

 

しかし、LV会場に向かいながら、私はまだ逡巡していました。
私はそれこそ子供の頃からアニメーションを見て育ち、昔は様々なイベントに通って沢山の知り合いを作り、そこで色々なことをしてきたりもしました。
ただ、歳を重ねて、さすがに前に出ようという気持ちはなくなりました。ファンの中心は若い人であるべきだし、こんなおじさんが出て行くもんじゃない。第一、今更そんなことをするのはあまりに恥ずかしい。
でもきっと、Day1を見た人なら、声を掛けさえすれば賛同してもらえるはず。4万人近いメットライフドームに比べて、LV会場は200人ちょっとだけど、それでもきっと、スクリーンの先の景色と繋がることができたら、100の楽しさが101にはなるんじゃないか。
……でもやっぱ、今更この歳のおじさんが声掛けて回るなんてないよなぁ。

結局、やると決めたのはそれが「ラブライブ!サンシャイン!!」の、Aqoursのライブだったからです。自分がこの作品、そしてこれまでのライブから受け取ったものを考えたとき、ここで何もしなかったら、結局ただの絵空事として、傍観者として眺めていただけということになってしまう。
作品をきっかけに自分の生き方そのものを見つめ直した人もいる中で、こんなのはものすごくちっぽけな自己満足のための行為だけど、それでも、「ラブライブ!サンシャイン!!」のライブで、みんなで楽しめることで、やりたいことがあって、やれることがあるのに動かなかったら、それはこの作品が好きだと言っている自分にとって、後悔として残ってしまう気がしたのです。

 

そうは言っても、いざ席を立って1列目に向かった私は、滅茶苦茶ビビっていました(笑)。もうね、社長相手のプレゼンの方が何倍マシか。足が文字通りガクガクする感覚なんて、ホント何十年ぶりだというぐらい。ただ、もう一人の自分がそれを楽しんでいたのも事実です。「やべ、いい年したおじさんのクセにむっちゃキンチョーしてる~」という感じ。

で、1列目の前に立った私は、そこに座っていた人たちに意を決して声を掛けました。
「すみません。ちょっといいですか?」

このとき話したのは、

  • Day1の虹がすごく良かったので、LV会場でも虹を作りたいと思いました
  • 私自身は企画した人とは全く関係ないけれど、もしよかったら一緒にやりませんか?
  • もし賛同してもらえるなら、Aqoursコールの時に、この列は〇〇色にして欲しいです
  • 全く強制ではありません

といったことです。
これを舞台から見て右側の通路を歩きながら前から後ろまで順番に伝え、1列目に戻り、今度は左側の通路を歩きながらまた伝える、ということをしました。

中にはにこやかに賛同の意を表してくれる方もいましたし、そうでない方もいました。感覚的には半数以上の方に、耳を傾けてもらえたと思います。ちょっと想定外だったのは、LVの場合、開演ギリギリに入ってくる人が多いということ。そういった方には伝えることができず、周りを見て合わせてもらえるといいのですが、それは祈るしかありません。
ともあれ後は、時が来るのを待つだけです。やれることをやり切った安堵感もあり、LVは素直に楽しむことができました。


そしてAqoursコールの時間。
ドームのような円形ではないので、全景を俯瞰することは叶いませんでしたが、私のいたLV会場にも、小さな小さな虹が生まれました。この時の感覚はDay1とはまた違う、緊張と嬉しさが入り混じったような独特のものでした。

 

正直、私以外の参加者の方がどう思われたのか、それは私にはわかりません。ライブはそれぞれが自分なりの楽しみ方を(迷惑をかけない範囲で)するのが本来だと思いますし、強制していないとはいっても、同調圧力を感じられた方もいると思います。
1人でも不満に思う人がいるなら、余計なことはやるべきじゃない。そう思われた方も、いたかも知れません。
それが分かっていても、それでも、みんなで作りたかったし、作ることができて、嬉しかったというのが私の気持ちです。